某駅。あの独特な空気で静まり返るその箱の中に、私と若い女性が一人と、主婦らしきおば様三人が乗り込んだ。ボタンの前に立つ私。あ。左肘に何か止まった?いや?気のせいか?5秒後、私の後ろにいたおばさん『ちょっと!叩くわよ!えいっ!』ん?『あ~逃したわ~』え?もしかして?その後ろにいたおばさん『真っ黒い大っきな蚊よ~あ!そっち!』やっぱり!若い女性『あ!いた!じっとして!えいっ!』後ろのおばさん『あ~またダメだった逃したわ~』おばさんの横にいたおばさん『あんなのに刺されたら大変だものね~』後ろのおばさん『急に叩いちゃってごめんなさいねふふふ』いえいえ。ありがとうございます。私もひょっとしたら、って思ってたんです。笑笑笑。そして、ポーンと地上に着いた事を知らせる音と共にドアが開き、一瞬真っ黒い蚊に翻弄されてしまった私達五人は『良かった。誰も刺されなくて良かった。』という安堵の笑いを投げかけ合い、それぞれこの箱を後にしました。わずか30秒の間に見知らぬおばさんに肘と背中を叩かれた私。それがちょっと可笑しいやら嬉しいやら、いつもはなんだか気まずい空気の箱の中を、笑いに変えてくれた真っ黒い蚊に、今日ばかりは感謝するのでした。難を逃れたあの蚊は、今も箱の中でまた違う誰かを笑わせてるかもしれませんね。
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