どんぶらこの恐怖

この世の中のいらんストレスのうち、約90%は電車内での出来事が占めてるような気がする。まず、知らない人とのあの至近距離。ありえない。人間にも動物と同じようにテリトリーってやつがあって、自分が大なり小なり張ってるテリトリーに他人が侵入すると警戒する。電車内はそんなテリトリーの無法地帯。ヘッドフォンから漏れる音。肩を叩いてレッドカードを突き付けてやりたい。携帯電話の話し声、着信音、操作音。取扱説明書を渡してやりたい。食べ物ののニオイ、キツい香水のニオイ。『ニオイ』は今や最新の化学兵器だってことを教えてやりたい。そして今日、世の中が浮き足立つ金曜の夜。長い道中ゆえ必死の思いで陣取った座席。隣の身体の大きな男性が前後左右に大きく揺れ始めた。来たな…。予想は的中。ぐわんぐわんと揺れたあげく私の方に寄りかかって来た。何度も何度も。本人は半覚醒状態。わかるよ、わかるよ、その状態。落ちては起きるの繰り返し。好きで寄りかかってるんじゃないもんね??でもね、でもね、アナタ重いのよーーーー!!!そのデカい図体を私に支えろと言うのですか?そんなの到底無理なお願いです。お陰で私の身体は半分腰が横になった状態。左隣のお姉さん、ごめんなさいね。でも気持ちわかるでしょ?と、私のストレスレベルが上昇して行く中、なにやら左隣のお姉さんの動きが怪しくなって来た。まさか、まさか…ええっ!?アナタもーー!?私はちょっと軽いパニックに陥りそうだった。なんで?なんで?なんで私の肩に?そんなに頼れる肩かしら!?話はココで終わらない。そうこうしてる間に男性が降り少し若い男性が座り、お姉さんが降り、そこに今度はもさい頭のAボーイ風なちょっとぽっちゃりしたこれまた大柄な男性が座り…。コイツだけは簡便だ…そう思った瞬間、キタ!?どんぶらこ~、どんぶらこ~。無理!無理!絶対無理!もう同情は出来ません!半泣きになりながら助けを求めるかのように周りに目線を移してみると、なんとあっちでもこっちでもどんぶらこ~、どんぶらこ~。なに?これ?みんな眠り薬でも飲まされちゃったの!? 起きてるのは私だけ!?そして、そんな光景を自分の中で笑いに変える暇もなく、もさい男の頭が私の肩に触れた瞬間、私は席を立ち上がった。ココにはもう居られない…。知らない人の頭が私の肩に乗っかってくる恐怖を、私は久々味わった。金曜の夜は終電車に乗るもんじゃない。絶対に。

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當間里美 jazz dancer / tap dancer / choreographer

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