私が初めて代々木公園に行ったのは2006年春。sujiこと浦上氏がNYに旅立って3ヶ月が経とうとしている頃だっただろうか。『代々木でみんな練習してるよ。』・・・え?みんなってだれ?そんな情報だけを便りに、なんべん公園に足を運んだかわからない。 代々木公園と言えば、都会のオアシスを求めておしゃれフリーク達が集う場所。そんな偏った印象を抱いていた私が一人で行った所で一体なにをすれば良いのだ?? 結局そんな状態のまま公園に行っちゃあ引き返し、行っちゃぁ引き返し、しまいには噴水のとこまで行って、ただジャンベをひたすら叩いてる集団を見物して帰る・・・そんなことが何回続いたっけ。 そして、意を決したとある日曜日。頑張って奥の噴水広場まで辿り着き、すると居る居る見た事ある顔が。けどみんなの顔を見て安心したんだか、ますます不安になったのか良く分からない。こっそり靴を履き替えて、こっそり音を出してみて、こっそりみんなの輪に入った・・・つもりになってみた。ちょっとづつ緊張がほぐれて楽しくなったのも束の間。遠くからほそ~い人が板を持ち、手を振りながらズンズンとこちらに近寄ってくるぞ。むむ。なななんと うらがみゆうじ!思わず呼び捨てにしてしまう位ビックリしてしまい、あれ?NYに居るんじゃ・・・ そして彼は例のごとくなんの前触れも無く板をバンッと置き、『さ。やってみようか!』ええぇぇ!?ななななんですと!?やる?なにを?ちょ、ちょっと、目が、目が、ぐるぐる・・・・そんなことをブツブツ言ってる間に始まってしまった。『久しぶり~』『はいっ』『ちゃんと練習してた~?』『はいっ』『ふ~ん。ふんふ~ん』『はいっ』音を言葉にしたらきっとこんな案配だっただろう。私は『はいっ』と言う(踏む)事が精一杯で・・・分厚い板の上、神聖なるタップ板を初めて踏ませてもらえる事に感動して・・・といってもその前にも自分で安い板を購入し地元の公園で踏んではいたけど、私が持っていたのは『ただの板』で彼が持っているのは『タップ板』。いいえ。同じ板なのに何故か全然違う足の裏の感触・・・。 一緒に踏ませてもらったのは1分?いや3分?いや30秒位だったかもしれない。でも私にはとてつもなく長い時間に思えた。初めて外へ出て一緒に踏ませてもらったその時の感じが、今も足の裏に残っている。 タップは、互いの考えている事が如実にわかるダンスだと思う。気持ち良く流れる音楽に身を委ねて踊る様に、気持ち良く流れる瞬間を互いに作り出していく。足という楽器を使って身体をその流れにのせながら。それはまるで日常の会話の様に、足並みが揃ったときの様に、同じ空気が流れたときの様に気持ち良く、一人じゃない事を実感する。 2006年春。初めての代々木公園。緊張したけど、わずか数分だったけど、確かに『始めの一歩』を踏みしめた瞬間でもあった。そして私の『次なる一歩』は、代々木公園から渋谷東急本店前へと場所を移し、ますます刺激的な瞬間を迎えるのであった。完。
第二話 『始めの一歩』の巻
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當間里美 jazz dancer / tap dancer / choreographer
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