第一話 『出会い』の巻

 私と、SUJIこと浦上雄次氏との出会いをお話します。 私と浦上氏との出会いは、2005年の10月。こっそり、とにかくこっそりと一人で観に行った熊谷和徳さんのパルコ劇場で行われたライブだった。そこには彼も来ていて、ひょんな事からお茶をすることになり(こっそり行ったのに結構知り合いに会ってしまった)、お互い長いダンス人生、顔の面識はあったものの、彼は、相当畑違いな私がココに居る事がとても不思議な様子だった。 改めて自己紹介をしたあと、『実はタップに興味があってね・・・』と私がつぶやいた。すると彼はワインを片手に『じゃあ一緒にやりましょうよ』とサラッと言って連絡先を教えてくれた。一瞬、私は耳を疑った。と同時に、一筋の光が見えた。でも、疑り深い私は考えた。『いやいやまてよ。面識はあったとはいえ初対面のようなもの。社交辞令に違いないッ』 そしてその場は滞り無くお開きとなり、私は次の日も、その次の日も、彼の言った『じゃあ一緒にやりましょうよ』を考えていた。 興味があっても何処から手をつけたらいいか分からなくて、どんな世界かも知らなくて、でもきっとTAPはDANCEだ!って事だけは思っていて。 それから一週間位して、私は自分のクラスが終わったあと、汗まみれのその手で携帯を手に取った。『あのぉ・・・先日お会いした里美ですけど・・・タップをどうしてもやりたいんです・・・あ。社交辞令だってことは重々承知・・・』と、緊張しながら蚊の鳴くような声で(と思ってるのは私だけ。きっと彼に言わせれば当時から態度だけはデカかっただろう。スミマセン)言った所、彼は電話の向こうで『わっはっは』と大声で笑ったあと、『よっしゃ!やろうやろう!』と快く言ってくれた。 そして、遂に同年11月15日東中野ベースメントにて初レッスンが開始されたのである。 それからというもの、これはチャーーーンス!とばかりに、私は嫌われるのを覚悟で彼に電話をかけまくり、今日嫌われてもいいように、明日嫌われてもいいように、とりあえずタップの練習方法だけは身につけてやれ!という気持ちでとりくんだ。 だって、考えてもみて下さい。ついこの間知り合ったばかりの、畑も違う得体の知らないダンサーで、あんまし喋った事も無い。おまけにタップのタの字も出来ない、なんにも出来ないのに態度だけはデカイこの私に、貴重な時間を割いてくれる。こんなことってありますか??? だから私は、『申し訳ない・・・』そう思う気持ちを敢えて押さえて学ぶ事した。一分一秒たりとも無駄には出来ん!そう思いながら練習した。 そして、それから彼はNYに旅立って行った。とてつもなく多くの課題を残して・・・。途方に暮れる私の顔を想像して下さい。『えらいこっちゃ・・・ひとりぽっちになってしもた・・・何も習得出来とらんぞ・・・・むむむ』 そして、ここから私のベースメント引きこもり人生がスタートするのであった。  あの時お茶をしなければ、あの時ワインを片手に『じゃあ一緒にやりましょうよ』と言ってくれなければ、今の私は居ない。そう思う。 何度も言うようだけど、この『じゃあ一緒にやりましょうよ』はホントにこのまんまだ。『ワインを片手に~』がそれを物語っている。社交辞令でも特別でもない、彼から発せられる、本当に自然な言葉だったのだ。 大きな事柄から小さな事柄まで、一緒に何かをやるって事がどんなに大変な事かも知っています。考え方や価値観なんかも皆違う人間だらけだって事も分かってます。それでも場所を選ばず、人を選ばず、そういう事じゃなくて『タップ、一緒にやろうよ!楽しいよ?』ただそれだけ。ただそれだけの言葉を本当にサラッと言ってのける うらがみゆうじ という人。わたしは多分この衝撃を一生忘れないだろう。  そしてこの『じゃあ一緒にやりましょうよ』は現在、『足音ーASHIOTO-』という言葉に変わり、より多くの人に向かって投げかけられている。もちろん、ワインを片手に。完。

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